■ 跨線橋の製作

モデルワークスから発売されている「3線形跨線橋B」というペーパーキットをベースにして、川西池田駅跨線橋をモデル化します。橋脚の美しさに惹かれたもので、本体の方はたぶん一から作り変えるだろうと思いながらの購入でした。入手して仮組みなど行いつつ検討した結果、やはり「真鍮で強度を持たせたフレーム+ペーパーで腰板などの木部を表現」という線で製作することにしました。枠については素材が手に入りやすいPlastructのプラ素材を使うことも考えましたが、枠の中にペーパーの細工を施す際に枠自身が脆くて工作を妨げるようなことがあって欲しくないこと、手早く組み立てを進められるハンダ付の方が性に合っていること、などの理由で真鍮素材となりました。ただし、階段下のトラスビームについてはエッチング抜きするほどのこともないことから、ここだけはPlastructの既製品#90652を使用することにします。ここも金属にすれば強度は万全ですが、面倒を嫌ったためちょっと中途半端な選択になりました。

(1) 鋳鋼製橋脚

鋳鋼製橋脚

鋳鋼製橋脚を組んだところ (2000.11.1)
接写が下手な(しかも逆光)せいで柱がゆがんで見えますが実際の製品はまっすぐです。

これはキットを特に工夫せずに組み立てています。 というか、キットのパーツからは結局これ以外ほとんど使わないことになりそうなので、このためだけに15,800円を払ったことになるかも知れません。ホワイトメタルの鋳鋼製支柱ですが、別売りだったならせいぜい4個入り\500というところでしょうか。それでも計8本も自作するよりははるかに手間が省けます。難を言うなら角柱部分と丸柱部分の継ぎ目の部分のディテールがあっさりとしている(フランジが付いていない)のが淋しいですね。仮に自分で原型を作ってロスト外注するなら、エッチングで製造所の文字などの彫刻も入れてみたいところです。
クロス中心の輪には自分で角度を出して4つの穴を開ける必要があります。ちょっと面倒です。すべての接着はエポキシ系で行いました。
2組作る必要がありますが、キットのものは一方が他方に比べて幅が広い設計ですから、プロトタイプにあわせて等幅で作成します。といっても台座を切り貼りするだけで済みますが。
最終的にホームに接着する時に台座をどうするか…その時にまた考えましょう。

(2) 妻板トラス組
1.5x1.5と3.0x2.0の真鍮アングルを組み合わせてトラスを作成します。もちろん太い方が外側の枠用になります。トラスビームの付くベースは3mmの帯板から切り出した小片を使用しました。X字になる個所は先に付く梁をアングルでなく帯板で置き換えました。ひたすら垂直と平行を目で確かめるとともに、実物写真と見比べて大体のプロポーションがイメージに合うように寸法を決めます。この妻板の寸法が決まれば、残り全体の寸法も殆ど決まってしまいます。

妻板トラス組

妻板骨組み(裏側)(2000.12.23)



(3) 骨格全体
もうちょっとの所で素材のアングルが切れてしまい、階段の一部が残ってしまいました。残念ながらこのまま世紀越えとなりそうです。キサゲ仕上げもまだ中途です。付属の階段は下から1/3分ほどしかありません。裏から見た時のことを考えると全部の段が見えていて欲しいですので、これもプラを張り合わせで作る必要がありそうです。まだまだ道のりは遠いようですね。

骨格(未完)

骨格(未完) (2000.12.26)


(以上2000.12.26記・続く)

(4)骨格の残りと屋根
さて、年も明け早くも1ヶ月が過ぎてしまいましたが、ようやく素材を調達して骨組みの残りに取り掛かりました。側面のアングルを3.0x2.0から一回り細い2.0x1.5に変更するという手戻りがあった他はそれほど時間もかからず、無事骨格の完成です。なお、上でビームにはPlastruct製品を用いると書きましたが、他の用途で買い求めた高頭アトリエ製の架線柱キットに入っていた、角柱用のビーム材(洋白エッチング)が驚くほどぴったりで、また使い切れないくらい入っていることですし、これを流用することにしました。(塗装のことを考えると一緒に塗る部分は同じ素材であった方が楽です。)アングル下部に直角にハンダ付けし、別の帯板で挟み込んで断面I字型にします。(プロトタイプの写真では、4つのビーム材が断面□型に組まれているようにも見えますが。)

ところで、最初に「モデルワークスのキットをベースに」と書きましたが、もうおわかりのように同キットの組み立てにはほとんど役に立たない記事になってきました。キット製作記事を期待されて読んでいただいた方には申し訳ありません。

枠組(1) 枠組(2)

骨格 (2001.2.1)

次に、プラの波板とエコーモデルの屋根用波板を並べて思案した末、主に厚み(破風板を付けた時の)のことを考え後者を用いて屋根を新規作成することにしました。薄板なので直接ハンダ付した場合に熱で歪みが出そうですから、手早く組むようにするのは勿論ですが、それでも案の定、派手に反り返ります(階段部分の屋根)。そこで裏側の枠組のさらに上に、2x2の太い角棒を反った方向に斜めに貼り付けて修正しています。廊下部分の方は点付けにしたためか、ほとんど反っていません。こちらの裏にも簡単な骨組を作りました。なお、屋根は取り外し式です。

屋根をかぶせたところ(1) 屋根をかぶせたところ(2)

屋根をかぶせた骨格 (2001.2.1)

屋根裏を見る

屋根裏を見る (2001.2.1)

これで金属工作部分は終わりです。
(以上2001.2.1記・続く)

(5) 板壁の作成
枠の中に入る壁部分は0.3mm厚(実測)のケント紙を表裏2枚貼重ねて作成します。A4サイズにカットしたケント紙にCADで作成した図面を直接印刷し、切り出した後ゴム系ボンドで貼合せます(下図)。羽目板のスジ彫りはカッターで軽く切り込みを入れることで行います。下図では全面に彫り線を引いてしまいましたが、塗装時に残ってしまいますので、本来は部品の上下で線を止めるようにするべきでした。その後、同じくケント紙を細切りした帯紙で縁取りなどを付けていきます。ここは反る心配がないので木工ボンドを使用しました。

CAD図面 紙パーツ

紙パーツによる板壁・床板 (2001.2.11)
左はCADによる出力図面(この鏡像も作成し、貼合わせる)

(7) 階段
前述のように階段をフルに再現するにはキットの部品では足りませんので、いろいろ素材を検討した末、加工のしやすさから、5x2mmの檜角材を貼り合わせて作成しました。キット付属のプラ階段をガイドにして、木工ボンドで貼って行きます。ボンドのはみ出しは要注意で、私ははみ出しを十分に取り除けなかったため、極薄の塗料で塗装がうまく仕上がらず、仕方なく通常の濃度の塗料を吹き付けることで逃げました。

(7) 上り口のゲート
実物も保存されている鋳物の門型支柱ですが、キットには厚紙で角柱を表現したものが付属しているだけでしたので、どうしようか迷った末、真鍮で似たものを自作することにしました。というわけで再び金属工作に戻ります。こういう場合、実物が残っているだけにかえって深追いしてしまうことになりかねません。最もシンプルに作るなら角パイプに丸棒を通し、上部を帯板でつなぐようになりますが、ここでは少し手を掛けて以下のようにしました。



門柱

(8) 組立と塗装
ペーパー部分と金属部分とは別々に塗装して組み立て後にゴム系接着剤で組み立てます。塗装は難しい部分ですが、ペーパー部分は薄い黒と茶系の色で全体を不均一に色付けした後、荒目のサンドペーパーや逆にしたカッターの刃で擦ることにより木の質感を出すとともに全体の調子を整えます。 これだけでは経年変化に耐えないと思われますので、上からクリアーを吹いておきます。クリアー仕上げをしない方が格段に質感は上回りますが、ここは妥協します。
金属部分は、部品ごとに塗り分けとなります。まず、屋根はきつい艶消しの黒で全体を吹き、パステル粉で色を付けて行きます。使用したのは、NOUVELの002,007,144,139,036などです。骨格は色が問題ですが、写真を見ると白と赤褐色が混じっていて、白く塗ったのが剥がれかけて下地が出たのか、赤褐色地が風化して白くなったのか良くわかりません。全体的には赤褐色が主と思われたので、グンゼアクリルの艦底色とオレンジにフラットベースを混合した色でまず全体を吹き、乾燥後艶消し白のエナメル塗料をドライブラシの要領で筆で荒く塗ります。さらに白がきつくならないようにエコーモデルのウェザリングベンガラで全体の色調を整えていきます。最初はウェザリングホワイトを試みたのですが、うまく乗らなかったのでこのような方法を取りました。
門柱部分は、少し色を変え、艦底色とウッドブラウンと白を混合して、やはりパステルでウェザリングしました。
写真で見ると、鋳鋼支柱部分は艶がまだ出すぎで凹凸も生きていないようです。
その他、詳細は省きますが、支柱には四角形にしたアングル材を接着し、これを介して本体枠にはめ込みとなるようにしてあります。煙よけ板は0.3mm真鍮板を折り曲げたものと0.4mm線(ステー)とで簡単に作ってあります。また、下り線の内側側板には実物のように駅名標記を貼り付けました。

(2001.3.完、2001.4.14記)



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